私は幕末の歴史が好きですが、坂本龍馬、吉田松陰、新撰組などの幕末を舞台としたドラマが何度となく放送されていますよね。このドラマに登場する幕末の志士達は萩と江戸、長崎と京都など地方と都市を何往復も行き来していました。
電車や車がない時代、質素な食事にもかかわらず、
彼らはなぜ、徒歩で何十日間も歩き続けることができたのでしょうか?
今回はエネルギーに主眼をおき、医学的、栄養学的な観点から、
このことを紐解いていきたいと思います。
ところで、人間はなぜ動くことができるのでしょう?
人間を車に例えるなら、ガソリンにあたるものがATP(アデノシン三リン酸)と言われる分子です。私たちは食べたものを細胞の中にあるミトコンドリアという器官で、ATPというエネルギーに変換しています。
これにより様々な活動が行えるのです。
筋肉が動くのも、心臓が動くのも、呼吸できるのも、神経伝達ができるのも、
このATPがあるからなのです。
では、エネルギーとは一体何でしょうか?
ヒトの活動の源であり、体力であり、元気の源です。
気力といえるかもしれません。
幕末の志士達は、何十日間も、あんな長距離を自分の足だけを頼りに歩いていたわけですが、現代の私たちと何が違ったのでしょうか?
昔、生物の教科書でこんな図をみたことはありませんか?
この図は模式的でミトコンドリアは数個しかありませんが、
実際には一つの細胞にミトコンドリアは100から3000個ほど存在します。
エネルギーを必要する細胞ほど数が多く、
心筋、骨格筋、神経細胞、肝臓などで数が多いことが知られています。
ミトコンドリアは60兆個の細胞のほぼ全ての細胞一つ一つにあり、
太さ0.001mmにもかかわらす、その重量は体重の1割程もあるのです。
体重50kgの人は5kgのミトコンドリアが在ることになります。
(お米の5キロ入りを想像して下さい!すごい量ですよね!!)
それだけ、人にとって重要な器官であることが伺えます。
このミトコンドリア工場にはエネルギーを作る3つの部署があり、それぞれ
①解糖系 ②TCA回路 ③電子伝達系といいます。
この工場で、3大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)を元に、ATPは生産されるのですが、
実はこれだけではヒトのガソリンであるATPは生産されません。
そこには、ある栄養素が必要となります。
それが酵素や補酵素の役割をするビタミン・ミネラルなのです。
車で例えるなら、エンジンオイルのような潤滑剤で、
これらの回路をうまく回してくれる影の立役者です。
自転車のチェーンも錆びていたら、ギシギシしてうまくまわりませんよね。
油をさすことによってスムーズにタイヤが回り出します。
酵素・補酵素はそんなイメージです。
特に、ビタミンB群、マグネシウム、鉄はこのエネルギー工場が稼働するのにかかせません。
さて、ここで、幕末の志士達が旅をする時におかれた状態を見てみましょう。
道中の食事は
①玄米おにぎり(雑穀入り)と
②漬け物(宿屋ではみそ汁、野菜、大豆、少量の魚や肉もあったかもしれません)
時には
③空腹状態(何も食べれない日もあったかもしれません)
そして
④ひたすら歩く
実はこの全てがATP産生に係わっているのです。
長くなりましたので、この続きは次回にお話しします。